石灰・糊・すさの100%天然素材で江戸時代から独自の技術が育まれてきた漆喰。漆喰の変わらない製法と変化するアイデア。現代に伝えてきた技術と文化を生かしながら、MYKEブランドの「JAPAN漆喰」は現代建築に合わせて別注をかけた商品です。製造を担う栃木県の製造会社に、石灰石の採掘から製造、製造に至るまでの研究について、お話を伺いました。前編は採掘から石灰を釜で焼く工程までのお話です。
地域に根ざした、漆喰づくり
JAPAN漆喰の製造元がある栃木県葛生地区は、約2億5千年前の海中のサンゴなどが堆積してできた日本国内でも有数の良質な石灰石の地層があります。古くからその土地の特長を生かした漆喰の製造がはじまりました。創業当時は建築用の漆喰を江戸へ販売することが多かったそうです。飛鳥時代には確立していたと考えられている日本の漆喰。白壁で美しく、防火・防湿性や丈夫さに優れていることから神社仏閣、城郭などで広く多用され、現在では東京駅など日本の主要な建築物に使用されている日本を代表する建材です。
100%国産、採掘から徹底した品質管理
漆喰の原材料の一つ、石灰石は日本で唯一自給可能な天然資源と言われています。ここでは自社鉱山から石灰岩を採掘。採掘作業は石灰製造の基盤、高い品質の石灰を出荷することは品質の高い漆喰の製造につながります。
守り続ける製法「塩焼き」
採掘された石灰石を窯で焼く「焼成」という次の工程に移ります。漆喰に使用する石灰は「塩焼き」と呼ばれる伝統的な製法でつくられています。炉の中に石灰石とコークス、そして少量の塩を入れて3-4日加熱しつづけることで生石灰の結晶が成長、また石灰石の不純物が揮発することで、より丈夫でより白い漆喰のもととなる高品質な石灰がつくられます。「塩焼き」で石灰を焼成するのは現在、全国でも数社。職人たちの強い意志により、江戸時代から続く製法が引き継がれています。
創業当時から続く「塩焼き」の製法ですが、2011年の東日本大震災の影響を受け50年以上使用した土中炉が崩壊、存続の危機に直面しました。塩焼きをやめるか続けるか大きな葛藤を乗り越え「我々には塩焼きでつくられた漆喰を供給する責任がある」と炉の再建を決心し、2017年4月に新しい塩焼き焼成炉が完成しました。塩焼きは私の中で、JAPAN漆喰のアイデンティティだと思っています。
後編では品質管理と漆喰研究の現場、JAPAN漆喰の特長、そして漆喰のこれからについてお話を伺いました。
鉱山は限りある天然資源です。環境を守りながら末永く掘るため、必要な分だけ掘ることを守り、10年単位で採掘計画を立ています。また採掘作業や調査を重ねながら計画を随時見直しが必要です。漆喰の性能基準をクリアするため、他の鉱物や粘土が混ざらないように現場を見極め、今あるものをより良く出荷することが我々の役割です。